工場で高調波が発生すると、電源装置や機器のトラブル、電力品質の低下など、さまざまな問題が起こることがあります。特に整流器やコンデンサが多く使用される現場では、高調波が発生しやすく、対策を怠ると深刻な影響を及ぼすことも。
「なぜ工場では高調波が発生しやすいのか?」、「どうすれば効果的に対策できるのか?」といった疑問を抱えている方も多いでしょう。本記事では、工場内でよく見られる高調波の原因と、具体的な対策法についてわかりやすく解説していきます。
高調波が発生するメカニズムや影響を理解することで、あなたの工場でも電力トラブルを防ぐ手助けができるはずです。ぜひ、この記事を参考に、対策を進めてみてください。

工場での高調波発生の原因とは?
工場では、様々な電力機器が稼働しており、その多くが電力を効率的に使うために非線形負荷の機器を利用しています。この非線形負荷こそが高調波の発生源となります。たとえば、整流器やインバータは交流を直流に変換する際に、電流や電圧の波形を歪めてしまいます。これが正弦波から逸脱した波形、すなわち高調波を生み出します。高調波が発生すると、電力品質が悪化し、工場全体の電力システムに大きな影響を与えることが知られています。
具体例として、機械加工工場では多くのインバータ制御が導入されていますが、このインバータが高調波を引き起こし、周囲の機器に電源トラブルを引き起こすケースがよくあります。こうした事態が続くと、工場内の設備全体のパフォーマンスが低下し、最悪の場合は機器の故障や生産停止に繋がることもあるため、早急な対策が必要です。
高調波が発生する仕組み
高調波は、電力システムにおける「非線形負荷」によって引き起こされます。通常、電力系統は正弦波の形状を持つ電流と電圧を流し、機器に安定した電力を供給します。しかし、非線形負荷が導入されると、この正弦波が歪み、その結果、複数の高次波形(高調波)が電力システム内に生じます。たとえば、整流器やインバータは、交流を直流に変換する際に波形を変化させるため、正弦波以外の波形成分、つまり高調波を生み出します。
工場内でよく見られる機器の一例として、インバータがあります。インバータはモーター制御などに使われ、電力効率を高めるために重要な役割を果たしていますが、その電力変換の過程で5次、7次、さらには11次や13次といった高調波が発生します。このようにして生じた高調波は、電力システム全体に広がり、工場内の他の機器にも悪影響を及ぼすことがあります。
たとえば、ある工場でインバータが稼働していると、その影響で隣接する機器が正常に動作しなくなるケースが発生しました。原因は、インバータが発生させた高調波が電力系統を通じて他の設備に影響を与え、過熱や制御系の誤動作を引き起こしていたのです。このようなトラブルは、特に電力の流れが複雑な大規模な工場でよく見られます。
このように、工場で使われる電気機器が多いほど、電力の質が重要になります。高調波の影響を無視すると、電力損失や設備トラブルが頻発し、結果として工場全体の生産性が低下するリスクが高まります。
工場設備で特に高調波を発生させやすい機器
工場で使用される特定の機器は、特に高調波を発生させやすい特性を持っています。それらの機器を以下に挙げ、その特徴について詳しく説明します。
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整流器
整流器は、交流を直流に変換するための機器で、特にその変換プロセス中に高調波が発生します。工場では、モーターや機械装置の電源として整流器が多用されており、その影響で電流波形が歪みやすくなります。特に第3次、第5次の高調波が多く発生するため、これにより電力品質が悪化します。 -
インバータ
インバータはモーター制御に使われ、電力の効率化を図るための重要な機器です。しかし、インバータも非線形負荷の一種であり、交流を直流に変換する際に高調波を発生させます。たとえば、ポンプや空調システムなどでインバータ制御がされている場合、その高調波は電源系統に影響を与えることがあります。特に、5次や7次の高調波がよく見られます。 -
スイッチング電源
スイッチング電源は効率的なエネルギー供給が可能な機器ですが、高周波のスイッチング動作が電流波形を歪めるため、高調波の原因となります。スイッチング電源は、精密機器やデータセンターなどで広く使用されており、これらが原因で工場の電力系統全体に影響を及ぼすことがあります。 -
蛍光灯・LED照明
工場内の照明装置もまた高調波の発生源です。特に蛍光灯やLED照明は、電力消費量が少ない反面、電流波形が非線形となるため、高調波が発生しやすいです。照明システムによる高調波が蓄積すると、電源装置や他の機器にも影響を及ぼすため、注意が必要です。
これらの機器が高調波を発生させることで、電源系統全体に波及し、機器の誤動作や効率低下を引き起こす可能性があるため、適切な対策が不可欠です。
高調波が引き起こすトラブルとは?
高調波が引き起こすトラブルは多岐にわたります。以下に代表的なトラブルと、その影響について具体例を交えながら説明します。
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機器の過熱
高調波によって電流が不安定になると、設備が過熱しやすくなります。過熱が続くと機器の劣化が早まり、故障のリスクが高まります。たとえば、ある工場では、インバータ制御のポンプが高調波の影響で過熱し、ポンプの寿命が短くなる事例が報告されています。 -
機器の誤作動
高調波は制御システムに干渉し、機器の誤動作を引き起こすことがあります。具体的には、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)やセンサーなどの機器が正確なデータを受信できなくなり、生産ラインが止まるケースがあります。特に、微小な信号を扱う設備は高調波の影響を強く受けるため、対策が必要です。 -
電源の低効率化
高調波が発生すると、電力損失が増加し、全体の効率が悪化します。高調波による電力ロスは、特に大規模な工場で大きな影響を与えます。たとえば、ある製造工場では、高調波対策を怠った結果、年間の電力消費が通常よりも10%以上増加したという事例があります。 -
設備の寿命短縮
高調波が原因で機器がストレスを受けると、設備の寿命が短くなります。これは特にモーターやトランスのような電力を多く消費する機器に影響します。具体的には、高調波が原因で絶縁体が劣化し、故障が頻発するという問題が発生しています。
これらの問題を防ぐためには、早期に高調波対策を講じることが重要です。
効果的な高調波対策方法とは?
高調波の影響を抑えるためには、工場における設備の特性を理解し、適切な対策を講じることが重要です。高調波の問題を軽減するために、以下のような具体的な対策方法が効果的です。
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高調波フィルタの導入
高調波フィルタは、電力システム内の高調波成分を除去する装置です。これにより、高調波が原因で発生する電力品質の低下や機器の誤作動を防ぎます。特に、整流器やインバータを多く使用する工場では、フィルタを導入することで安定した電力供給が可能になります。 -
直列リアクトルの使用
高調波が原因で発生するトラブルの多くは、コンデンサに対する影響が大きいため、直列リアクトルをコンデンサと組み合わせて使用することが一般的です。直列リアクトルは、コンデンサの負担を軽減し、高調波の影響を抑える役割を果たします。具体的には、第5次や第7次高調波を効果的に抑制します。 -
電力供給システムの最適化
工場内の電力供給システム全体を見直し、配電系統の設計を最適化することで、高調波の発生を抑えることができます。例えば、特定の負荷が集中するエリアに高調波を抑える装置を設置することで、電力ロスや機器への影響を最小限に抑えることが可能です。 -
機器の定期的なメンテナンス
高調波を発生しやすい機器の定期的なメンテナンスを行うことで、問題の早期発見と対策が可能になります。整流器やインバータは特にメンテナンスが重要であり、フィルタの目詰まりやリアクトルの劣化を防ぐことが、高調波トラブルの未然防止に繋がります。
これらの対策を実施することで、高調波が工場設備に与える影響を大幅に軽減でき、安定した生産環境を維持することが可能になります。
直列リアクトルによる対策の効果
直列リアクトルは、高調波対策において非常に効果的な手段です。特に、工場に設置された力率改善用コンデンサと組み合わせることで、高調波の影響を大幅に軽減できます。直列リアクトルはコンデンサの負担を軽減し、電力系統内で高調波による電圧の歪みを抑制する役割を果たします。
具体的には、第5次や第7次の高調波に対して効果があり、これにより設備の寿命を延ばし、故障リスクを減少させることが可能です。たとえば、ある工場では、高調波が原因でコンデンサが頻繁に破損していましたが、直列リアクトルを導入することで、そのトラブルを大幅に減少させることができました。
さらに、直列リアクトルは、電力供給の安定性を向上させる役割も担っています。工場全体の電力消費を最適化し、高調波の悪影響を抑えるため、特に大規模な工場や設備が多い現場では非常に重要な対策手段となります。
また、直列リアクトルを適切に設置することで、電源の過負荷や過熱を防止し、エネルギー効率の向上にも貢献します。したがって、直列リアクトルは高調波を抑えるためだけでなく、全体的な電力管理の改善にも役立つ重要なデバイスです。
高調波フィルタの役割と選び方
高調波フィルタは、電力系統内で発生した高調波を効果的に除去する装置です。これにより、機器の誤作動や過熱、さらには電力ロスを防ぐことができます。工場での高調波対策には、特にフィルタの導入が重要であり、適切なフィルタを選ぶことが高調波トラブルの発生を防ぐ第一歩です。
フィルタには、パッシブフィルタとアクティブフィルタの2種類があります。パッシブフィルタは、基本的な構造で、直列リアクトルやコンデンサを組み合わせて高調波を抑制します。一方、アクティブフィルタは、より高度な技術を使用し、リアルタイムで高調波を除去します。どちらを選ぶかは、工場の規模や使用機器、発生する高調波の程度によって異なります。
下記の表で、2種類のフィルタの比較を行います。
| フィルタタイプ | 特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| パッシブフィルタ | シンプルな構造で低コスト | 設置が簡単で、保守も手軽 | 除去できる高調波の範囲が限定される |
| アクティブフィルタ | 高度な技術でリアルタイム制御 | 幅広い高調波に対応可能 | 導入コストが高く、保守も複雑 |
パッシブフィルタは、設置コストが低く、メンテナンスも容易であるため、小規模工場や限られた高調波が発生する環境に適しています。一方、アクティブフィルタは、リアルタイムで高調波を抑制できるため、複雑な電力環境で使用される大型工場に向いています。
力率改善が高調波対策に与える影響
高調波対策において、力率改善も非常に重要な役割を果たします。力率改善とは、電力の効率を上げるために、無効電力(実際に消費されない電力)の割合を減らすことです。通常、工場では力率改善用コンデンサが設置されており、このコンデンサが高調波に対して敏感です。
力率改善を適切に行うことで、無効電力の発生を抑え、エネルギー効率を向上させると同時に、高調波の発生を抑える効果も期待できます。特に、高調波が発生している環境では、力率改善用のコンデンサと直列リアクトルを組み合わせることで、高調波の影響を大幅に軽減できます。
具体的には、工場で多く使用されるインバータや整流器が原因で発生する高調波に対して、これらの機器を導入することで、電力の安定供給を図ることが可能です。
工場での高調波測定とトラブル防止法
工場での高調波問題を解決するためには、まず現状の高調波レベルを正確に把握することが重要です。高調波の発生状況を測定することで、どの設備が高調波を引き起こしているのか、どの程度の影響があるのかを判断できます。
高調波測定は、特別な測定器を使用して電力系統の電圧や電流の波形を調べることで行われます。通常、周波数が50Hzまたは60Hzの基本波に対して、どのような高次波形(第3次、5次、7次など)が発生しているかを確認します。測定結果を基に、工場のどの部分が問題を抱えているのかを特定し、それに応じた対策を講じることが可能です。
例えば、ある工場では、インバータの使用が多いため、5次高調波が特に大きな問題となっていました。測定結果を基に、インバータの運用時間を見直し、さらに高調波フィルタを導入することで、トラブルを回避しました。このように、測定は高調波対策を行う上で不可欠なステップです。
高調波測定によって、電力系統の弱点を発見することができ、これにより設備の効率的な運用が可能になります。また、測定結果は設備投資の判断材料ともなるため、定期的に行うことが推奨されます。
高調波測定の手順と注意点
高調波測定は、特定の機器や装置に依存する問題を解決するための重要な手段です。正確な測定を行うためには、以下の手順に従う必要があります。
高調波測定の基本手順:
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測定器の設置
まず、電力系統に高調波測定器を設置します。測定器は、電流や電圧の波形をリアルタイムで監視し、高調波の発生状況を解析します。測定器の取り付けは、安全基準を遵守し、電力供給を中断せずに行うことが重要です。 -
測定範囲の決定
次に、どの範囲の設備で高調波が発生しているのかを特定します。工場全体を測定するのが理想ですが、問題が顕著なエリアに集中して測定することで、効率的に問題を解決できます。 -
波形データの解析
測定器が収集したデータを基に、電流や電圧の波形を解析します。特に5次や7次の高調波が頻発しているかどうかを確認します。このデータに基づいて、どの設備が原因となっているのかを特定します。 -
対策の計画立案
測定結果を基に、高調波フィルタの導入や直列リアクトルの設置、または設備運用の見直しなどの対策を検討します。測定器を長期間設置してデータを収集することで、最適な対策を計画することができます。
注意点:
- 測定を行う際は、測定器の設置場所や取り付け方法に注意し、正確なデータを得ることが重要です。
- 測定結果が一時的な異常ではなく、恒常的な高調波の発生であるかどうかを確認するため、定期的に測定を行うことが推奨されます。
高調波トラブルを予防するためのメンテナンス方法
高調波トラブルを予防するためには、定期的なメンテナンスが不可欠です。特に、整流器やインバータといった高調波を発生させやすい機器に対して、適切なメンテナンスを行うことで、高調波の影響を最小限に抑えることができます。
まず、整流器のメンテナンスとしては、電力供給が安定しているか、波形の歪みが大きくないかを定期的に確認することが重要です。また、コンデンサやリアクトルなどの付随機器も正常に機能しているかチェックし、異常があれば早急に修理または交換します。
インバータのメンテナンスでは、周波数変換の際に発生する高調波の影響を低減するため、フィルタの設置や直列リアクトルの追加を検討することが必要です。これにより、高調波によるトラブルが大幅に減少します。
加えて、工場全体の電力系統を監視し、電圧や電流の波形が異常な場合には、早急に対応することが求められます。
ある工場では、定期的に測定を行い、問題が発生する前にコンデンサの交換やフィルタのメンテナンスを実施することで、大規模なトラブルを未然に防いでいます。このように、メンテナンスを怠らないことで、長期的な高調波トラブルの予防が可能です。
高調波トラブル発生時の対応策
高調波トラブルが発生した場合、迅速かつ適切な対応が求められます。以下の手順で対応することで、被害を最小限に抑え、トラブルを早期に解決できます。
高調波トラブル発生時の対応策:
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問題の特定
まず、どの設備が高調波トラブルを引き起こしているのかを特定します。測定器を使用し、電力系統全体をチェックすることで、問題のあるエリアや機器を迅速に発見できます。 -
高調波フィルタの導入
問題が発生している機器に対して、すぐに高調波フィルタを導入します。これにより、トラブルの原因となっている高調波成分を除去し、設備全体の安定性を取り戻すことが可能です。 -
直列リアクトルの設置
コンデンサの劣化や高調波の影響を防ぐため、直列リアクトルを設置することも効果的です。これにより、電圧の歪みを抑制し、高調波の悪影響を最小限に抑えます。 -
設備の再調整とテスト
トラブルが解消された後、設備全体を再度テストし、再発の可能性がないか確認します。問題が再発しないように、定期的に測定を行い、必要に応じて対策を強化することが推奨されます。
高調波フィルタの接続箇所
高調波フィルタは、高調波成分を除去するために電力供給ラインに設置されます。一般的な工場設備における接続箇所は以下の通りです。
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負荷側(機器直前)に設置
高調波フィルタは、高調波を発生させる機器の直前に接続されるのが一般的です。たとえば、インバータや整流器などが接続されている場所にフィルタを設置することで、高調波を発生源の近くで抑制し、他の設備や電力系統全体に波及するのを防ぎます。
具体的には、インバータの入力側(交流入力)や出力側(負荷に電力を供給する部分)に接続されることが多いです。これにより、インバータや整流器が発生する5次や7次の高調波を効果的に抑制し、安定した電力を供給できます。 -
コンデンサバンクに設置
コンデンサバンク(力率改善装置)も高調波の影響を受けやすいため、高調波フィルタをコンデンサバンクの近くに設置します。高調波がコンデンサに流れ込むと、過電流や過熱による故障のリスクが高まるため、フィルタを接続することで、コンデンサへの負担を軽減します。コンデンサバンクを保護するためのフィルタは、通常、高調波発生機器とコンデンサの間に配置されます。 -
主配電盤(MCC)に設置
工場の主配電盤(モーターコントロールセンター: MCC)にも高調波フィルタを接続するケースがあります。主配電盤に接続することで、工場全体の電力供給系統に流れ込む高調波を広範囲で除去することが可能です。この方法は、個別の機器にフィルタを設置するのではなく、全体の高調波対策として有効です。
直列リアクトルの接続箇所
直列リアクトルは、特に力率改善用のコンデンサと組み合わせて使用され、高調波によるコンデンサの損傷を防ぐ役割を果たします。直列リアクトルの主な接続箇所は以下の通りです。
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コンデンサと直列に接続
直列リアクトルは、力率改善用コンデンサと直列に接続されます。高調波が電力系統内に存在すると、コンデンサがその高調波を吸収してしまい、過負荷状態になることがあります。これを防ぐために、コンデンサとリアクトルを直列に接続し、高調波を遮断する役割を持たせます。
具体的には、コンデンサの一次側にリアクトルを挿入することで、第5次や第7次高調波の成分を大幅に減少させる効果があります。特に、工場内で使用される大規模なコンデンサバンクでは、この直列接続によってコンデンサの長寿命化が図れます。 -
変圧器の前段に設置
高調波が強く影響する場合、直列リアクトルを変圧器の一次側に接続することもあります。これにより、高調波が電圧波形を歪ませるのを防ぎ、変圧器の保護や電力系統全体の安定化に貢献します。変圧器に直接高調波が流れ込むと、過熱や絶縁破壊の原因となるため、リアクトルでこれを遮断することが重要です。
具体的な接続例
例えば、ある工場では、インバータを多用しており、頻繁に高調波が発生していました。そこで、インバータの出力側に高調波フィルタを接続し、さらにコンデンサに直列リアクトルを追加したことで、高調波によるトラブルが大幅に減少しました。このように、設備ごとに最適な位置に高調波フィルタや直列リアクトルを設置することで、効果的な高調波対策が可能になります。
経済的な側面からの高調波対策方法の選定
工場の高調波対策を行う際、経済的な観点を無視することはできません。適切な対策方法を選定するには、初期導入コスト、メンテナンスコスト、そして設備の運用効率を長期的に評価する必要があります。ここでは、コストパフォーマンスに基づく具体的な選定方法について説明します。
1. パッシブフィルタ vs アクティブフィルタの選定
高調波フィルタには、大きく分けてパッシブフィルタとアクティブフィルタの2種類があります。それぞれに特徴があり、コストやメンテナンス面で大きな違いがあります。
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パッシブフィルタは、整流器やコンデンサといったシンプルな構造を持ち、導入コストが低いため、比較的小規模な工場や予算が限られた現場では適しています。しかし、除去できる高調波の範囲が限定されるため、高調波成分が一定の範囲内で抑えられている場合に有効です。また、メンテナンス費用も安価で、基本的なメンテナンスだけで済むため、ランニングコストを抑えることが可能です。
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アクティブフィルタは、高性能で幅広い高調波をリアルタイムで除去できる反面、初期導入コストが高く、メンテナンスも専門知識が必要です。大規模な工場や、複数の非線形負荷が同時に動作し、高調波成分が複雑な場合にはアクティブフィルタが効果的です。しかし、初期費用やメンテナンス費用が高いため、高調波問題が深刻であり、長期的に安定した電力品質が求められる場合に適しています。
2. 直列リアクトルのコストと効果
直列リアクトルは、比較的安価に導入できる高調波対策機器であり、特にコンデンサとの組み合わせで高調波対策を行う際に効果的です。リアクトル自体は単純な構造であり、耐久性も高いため、長期間にわたって安定した効果を発揮します。
- 初期導入コストは比較的低いですが、コンデンサの寿命を延ばし、機器の過熱や劣化を防ぐことで、長期的なコスト削減につながります。
- メンテナンスコストも低く、適切に設置されたリアクトルは、定期的な点検やクリーニングだけで十分に機能を維持できます。そのため、コストパフォーマンスが高く、特に中小規模の工場における高調波対策として非常に有効です。
3. 設備の全体的なリプレイス vs 部分的な対策
高調波対策の経済性を考慮する際、工場全体の設備をリプレイス(交換)するのか、それとも部分的に対策を講じるのかも重要なポイントです。
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設備全体のリプレイスは、老朽化したインバータや整流器を最新の高調波対策機能が搭載された機器に交換する方法です。初期投資は大きくなりますが、全体の設備の効率が向上し、長期的にエネルギーコストを削減できるメリットがあります。また、最新の機器は高調波成分を抑制する機能を標準装備していることが多く、追加の対策が不要になる場合もあります。
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部分的な対策としては、既存設備をそのままに、必要な箇所に高調波フィルタや直列リアクトルを導入する方法です。これにより、初期コストを抑えつつ、特定の問題に焦点を当てた対策を実施できます。特に、予算が限られている場合や、問題が一部の設備に限られている場合には、部分的な対策が有効です。
4. 投資対効果の検討
高調波対策の経済的な選定には、**投資対効果(ROI: Return on Investment)**を検討することが重要です。高調波によるトラブルが原因で生産効率が低下したり、機器の修理や交換にかかるコストを考慮すると、適切な高調波対策を講じることで、長期的にはコスト削減につながります。
たとえば、ある工場では、インバータによる高調波が原因で生産停止が頻発していましたが、パッシブフィルタを導入することでトラブルが減少し、生産効率が10%以上向上しました。このような改善例は、高調波対策への投資がもたらす経済的なメリットを示す良い例です。
経済的な対策選定のポイント
- 高調波フィルタの選択は、予算や工場の規模、高調波の発生状況に応じてパッシブかアクティブかを検討する。
- 直列リアクトルの導入は、安価かつ効果的な対策として、特にコンデンサバンクの保護に効果がある。
- 設備全体のリプレイス vs 部分的な対策は、予算と長期的なコスト削減効果を見極めて判断する。
- 投資対効果を常に検討し、初期投資に対してどれだけの生産効率向上や修理コスト削減が見込めるかを評価する。
まとめ
今回の記事では、工場における高調波の原因、効果的な対策方法、さらに経済的な側面からの対策選定について詳しく解説しました。以下に要点をまとめます。
- 高調波の原因: 工場で使用される整流器やインバータなどの非線形負荷機器が高調波を引き起こします。特に第5次や第7次の高調波が多く、電力波形を歪めるためにトラブルを引き起こします。
- 高調波が引き起こすトラブル: 機器の過熱や誤作動、電力効率の低下、設備の寿命短縮など、工場全体に悪影響を与えます。特にコンデンサやモーターなどが高調波の影響を受けやすいです。
- 対策方法: 高調波フィルタや直列リアクトルを効果的に設置することで、問題を軽減できます。高調波フィルタは、特に発生源近くやコンデンサバンクに設置し、直列リアクトルはコンデンサとの組み合わせで高調波の影響を抑えます。
- 経済的な選定基準: パッシブフィルタとアクティブフィルタを予算や効果に応じて選定し、部分的な対策か設備全体のリプレイスかを判断します。また、投資対効果を考慮し、コスト削減と設備の効率化を図ることが重要です。
高調波によるトラブルは工場の生産効率に大きな影響を与えるため、早期に適切な対策を講じることが重要です。経済的側面も考慮しながら、長期的に効果のある対策を導入し、安定した電力供給を維持してください。




